他科の知識
交通外傷と法医学
宮内 義之介
1
1千葉大学医学部法医学教室
pp.1595-1599
発行日 1966年11月20日
Published Date 1966/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204158
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はじめに
一般路上で発生した致死的人身自動車事故の場合は,現場,目撃者,加害車(運転手を含む),被害者(車両を含む)の4方面からの調査ならびに検査を行なつて,逐次的に事故の模様を再現し,その責任のあり方について考察を下すのが普通である,しかし,実際には被害者のみからその経過を推定する必要にせまられることがもつとも多い.
自動車事故における損傷は,一般外傷と異なつて,特有な作用面を有するはなはだ高度の外力が作用し,複雑な経過をとつて形成されるため,多種多様の形状を示し,成因の解析は困難のように思われたが,当教室の研究によつて,多数例について損傷の分析判断を行なつていくと,複雑な損傷の排列と形状も自動車作用面の構造形態と事故の様相とに関連していることが判つてきた.したがつて,被害者損傷の分布,排列,形状などから,逆に事故発生当時の,被害者と加害車との相関関係を逐次的に再現することが可能となり,また,加害車の車種推定もある程度可能となつた.このためには,被害者の重篤な損傷ばかりでなく,軽度の表皮剥脱や皮下出血に至るまで詳細に検査することが必要であり,またこれに関連して,被害者の乗車していた車両,被害者の着用していた衣類の損傷や汚染の検査も欠くことができない.私は事故時の損傷を形成機序の上から衝突創,転倒創,轢創に大別して検討している.
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