特集 ICUにおける神経内科
Part 3 末梢神経・筋疾患
11. 神経筋接合部疾患・筋疾患—重症筋無力症クリーゼを中心に
津田 笑子
1
Emiko TSUDA
1
1札幌医科大学 神経内科学講座
pp.849-860
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200327
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
神経筋接合部疾患,筋疾患では呼吸筋筋力低下により呼吸不全を呈する場合があり,急性増悪時には緊急対応を要する。一方,慢性経過のためこれまで診断を受けていない患者が呼吸障害で発症した場合は,呼吸不全の原因としてこれらの疾患を鑑別する必要がある。本稿では,重症筋無力症クリーゼを中心に呼吸不全を呈する筋疾患と横紋筋融解症について概説する。
Summary
●重症筋無力症(MG)クリーゼは,主に咽頭筋,呼吸筋に高度の筋力低下が生じる状態であり,緊急対応を要する。原疾患治療を行っても早急に呼吸不全を改善することは難しく,躊躇せずに気管挿管を施行する。
●クリーゼの治療が必要なMG患者では,抗コリンエステラーゼ薬を中止する。ステロイドパルス療法は有効な治療法の1つだが,筋力低下が増悪する場合がある。気道を確保し人工呼吸器管理を施行したうえで血液浄化療法(PP)や免疫グロブリン静注療法(IVIg)を組み合わせて使用する。
●PPとIVIgのどちらを選択するかに関して明確なエビデンスはない。患者プロファイルや副作用,施設設備などを考慮して選択を行うが,より早期からの効果発現が期待できるPPが選択される傾向がある。
●筋疾患は通常,慢性呼吸不全を呈することが多い。しかし,筋疾患による慢性呼吸不全は肺炎,無気肺,心不全,誤嚥,薬物の筋弛緩作用を契機に急性増悪する場合がある。
●横紋筋融解症では,後遺症や合併症(特に腎不全)を回避するため,薬物が原因と考えられる場合は被疑薬を直ちに中止し,輸液などの治療を早急に開始する。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.