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ICUに入室となる重症患者は,疾患や治療のために安静を強いられ,床上排泄をせざるを得ない状況にある。また病態的にも,ICUにて行われる集中治療によって,下痢や便失禁などの排泄機能の障害をきたしやすい状態にある。しかし,下痢や便失禁の評価は非常に曖昧であり,特に医師は看護師から「下痢をしているのでなんとかしてもらえないか」と報告を受けて,初めて問題を把握することが多い。このように,下痢や便失禁に対して真摯に考え対応していないのでは,と思われてしまいかねない実情がある。
消化管排泄物の管理方法に関して発表されている研究報告は極めて少なく,決してエビデンスレベルの高い文献が多い分野ではない。本稿では,導便チューブの使用方法,適応,有用性や合併症について,現在報告されている文献を吟味して概説する。
Summary
●肛門内留置型排便管理システム(FMS)の適応となり得る患者は非常に幅広く,特定の疾患群には限定されない。
●FMSの使用目的は主に,①便による創汚染・創感染予防,②便失禁関連皮膚障害(IAD)高リスク患者の発症予防,③カテーテル汚染予防などが挙げられる。
●Bristol stool chartや,King's stool chartなどにより,下痢・便失禁の程度を客観的かつ経時的に評価することが大切である。
●IADのリスクを考えた場合,1日3回以上の泥状・水様便がみられ,4日間程度の持続が見込まれるかどうかが,FMS導入の1つの判断基準となり得る。
●熱傷やFournier壊疽などに対して,ストーマ造設と導便チューブを比較した質の高い研究報告が期待される。
●非常にまれではあるが,FMS使用の重篤な合併症(有害事象)として,直腸のpressure ulcerから出血をきたすことがある。抗凝固療法を受けている患者は特に注意が必要であり,造影CT検査,内視鏡検査・処置,血管造影検査・処置,縫合止血処置といった迅速な対応が必須である。
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