特集 産科ICU
6.妊婦の内分泌合併症—DKA,甲状腺クリーゼを中心に
鈴木 利彦
1
,
吉田 英樹
2
,
藤谷 茂樹
3,4
Toshihiko SUZUKI
1
,
Hideki YOSHIDA
2
,
Shigeki FUJITANI
3,4
1東京ベイ・浦安市川医療センター 腎臓・内分泌内科
2聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センター
3東京ベイ・浦安市川医療センター
4聖マリアンナ医科大学 救急医学
pp.331-345
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200273
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糖代謝異常合併妊娠および甲状腺機能異常合併妊娠は,いずれも種々の周産期合併症の原因となるため,高リスク妊娠としての管理が必要である。特に,糖尿病性ケトアシドーシスdiabetic ketoacidosis(DKA),甲状腺クリーゼは,重症救急疾患であり,母体の致死率が高い疾患であるため,迅速かつ適切な対応が求められる。
本稿では,内分泌疾患合併妊娠の管理および,妊婦における内分泌緊急症について,ICUで遭遇する頻度の高い糖代謝異常と甲状腺機能異常に関して述べる。
Summary
●糖代謝異常合併妊娠・甲状腺機能異常合併妊娠は,いずれも周産期予後が不良であり,妊娠前からのコントロールが重要である。
●糖尿病合併妊娠・妊娠糖尿病患者の切迫早産において,リトドリンは糖尿病性ケトアシドーシス発症リスクがあるため投与しない。
●妊娠中のBasedow病治療は,抗甲状腺薬が基本である。β遮断薬は適応・投与期間とも限定的に用いられる。放射線アイソトープ治療および甲状腺手術は,甲状腺クリーゼ発症時以外には適応がない。
●糖尿病性ケトアシドーシス,甲状腺クリーゼとも致死率の高い疾患であるため,胎児よりも母体の治療が優先される(母体維持ができてこその胎児維持!)。
●劇症1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスや,甲状腺基礎疾患のない甲状腺クリーゼなど,既往歴がない妊婦にも内分泌緊急症は発症する可能性があり,誤診につながるため注意が必要である。
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