特集 産科ICU
7.産科周術期出血1—重症妊娠高血圧腎症の緊急帝王切開術における周術期管理
田辺 瀬良美
1
Serabi TANABE
1
1東京都立多摩総合医療センター 麻酔科
pp.347-357
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200274
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
妊娠高血圧症候群(PIH)は頻度が高く,重篤化しやすい疾患であり,早期発見と適切な治療介入が母児の予後を大きく改善すると考えられている。PIHの根本的治療は妊娠の終結であるため,緊急帝王切開となる症例が多い。本稿では,妊娠高血圧腎症(PE)を発症した妊婦に対して緊急帝王切開を施行した症例をもとに,周術期における管理について解説する。
Summary
●妊娠高血圧症候群(PIH)は全妊娠の6〜10%に合併し,その1/4は重症である。母体死亡の11%に合併する。頻度が高く,重篤化しやすい疾患である。
●PIHの基本病態は,妊娠時に発生する全身性の血管内皮障害と血管攣縮である。このため血管透過性亢進,血液濃縮,凝固能亢進をきたし,多臓器に障害をきたす。
●PIHの根本的治療は妊娠の終結であるため,緊急帝王切開となる症例が多い。緊急度を正確に判断し,適切な麻酔管理が必要となる。
●超緊急帝王切開は全身麻酔を要するが,挿管,抜管時の血圧のコントロールが重要である。また,容易に肺水腫をきたすため,輸液管理に注意が必要である。
●容易に播種性血管内凝固症候群(DIC)に陥るため,大量輸血が必要になることがある。血管透過性亢進のため肺水腫の発症に留意し,血管内容量の評価と補正に努めることが重要である。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.