今月の主題 内分泌疾患の新たな展開
救急治療
甲状腺クリーゼ
森 徹
1
1京都大学医学部・第2内科
pp.436-437
発行日 1985年3月10日
Published Date 1985/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219662
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甲状腺クリーゼ(thyroid crisis or storm)は,未治療で放置された,または不十分な治療をうけていたバセドウ病患者に何らかのprecipitating factorが加わることによって,個体が甲状腺ホルモン過剰状態に適応しきれなくなったときに発現する,きわめて重篤な病態である.診断や治療法の改善にも拘らず一旦発症するとその死亡率は30%に及ぶとされる.
本症の診療に際しては,早期診断と早急かつ適切な処置が回復への鍵であり,以下の4つの原則が重要である.1)診断は臨床所見および非特異的な生化学検査成績に基づいて下されるべきで,ホルモン測定成績を待ってはいけない.2)疑わしい場合にはホルモン測定結果による診断の確立をまたずに治療をスタートする.3)治療開始に先立って採血を施行し,この測定成績を以降の治療に役立てる.4)precipitating factorを発見し,この除去につとめる.以下,本症についてその診断および治療の要点を述べる1,2).
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