- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
妊婦の周産期における合併症は,母体のみでなく胎児の健康状況に大きな影響を及ぼす。周産期合併症や併存する重度の内科疾患を適切にマネジメントできることは,産婦人科医や麻酔科医のみならず集中治療医にとって非常に重要なスキルといえる。血行動態の管理や適切な体液量管理を日々行うことが求められるが,その際に妊娠が循環・呼吸生理に多大な影響をもたらす点について,よく理解しておかなければならない1)。
集中治療管理が必要な妊婦は,先進国では2.5/1000分娩2)という報告がなされている。日本における妊産婦死亡率は3.5/10万分娩,周産期死亡率は2.6/10万分娩(2013年厚生労働省)であり,欧米先進国と比較しても遜色のないレベルにまで到達している3)。重症妊婦の死亡率は,12〜20%との報告がなされており,その原因として最多なものは妊娠高血圧症候群(子癇,妊娠高血圧腎症)および関連疾患(HELLP症候群など)とされ,出血(常位胎盤早期剝離,産後出血)や呼吸器合併症〔肺水腫,肺炎,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)など〕がこれに次ぐ4)。周産期集中治療領域においても,病態生理を正しく理解して治療にあたることが最も大切であり,非侵襲的なモニタリングでは起きている事象が十分把握できない場合や治療への反応性が悪い場合は,侵襲的なモニタリングを追加し,得られた指標をもとに治療方針を何度も再検討していくことになる5)。
本稿では,周産期に合併する循環不全の患者管理を,母体の生理学や病態生理学を理解しながらどのように進めていくかを,今までに報告がなされているモニタリングを中心に解説する。
Summary
●妊婦の血行動態,体液量の管理には,妊婦の生理学的変化を理解する必要がある。
●血行動態モニタリングを要する疾患を,産科的なもの,非産科的なものに分けて理解する。
●重症弁膜症,心筋症,肺・腎疾患に肺動脈カテーテルが用いられることがあるが,アウトカム改善に結びつくという明確なエビデンスはない。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.