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運動器疼痛のメカニズム
運動器疼痛は,多くの人の日常生活に影響が及ぶことや健康寿命に影響することから,社会的な問題となっている。しかし,運動器疼痛に関連した症状は複雑で異質性があるため,効率的な予防法や治療法がいまだに十分でない。発痛メカニズムが異なれば,手術1)や中枢神経系作用薬2)などの治療に対する反応も異なることが報告されている。そのため運動器疼痛のメカニズムを評価によって同定し,治療方針を決定する必要がある。国際疼痛学会International Association for the Study of Pain(IASP)は2016年に,疼痛のメカニズムとして,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛に,第3の疼痛として痛覚変調性疼痛を加えた。侵害受容性疼痛は,骨折,変性疾患,炎症疾患などによって侵害受容器に刺激が加わることで痛みが生じ,神経障害性疼痛は,神経の圧迫・損傷などによって痛みが生じ,痛覚変調性疼痛は,中枢神経系の可塑的変化によって痛みが生じる。
IASPは運動器疼痛に対する評価アルゴリズム(IASP grading system)を報告している3)(図1)。このアルゴリズムでは,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛を除外し,痛覚変調性疼痛の可能性があるかどうか段階を追って,最終的に決定していく。Step 1では痛みの期間,Step 2では痛みの範囲,Step 3では侵害受容性疼痛が痛みのすべての原因であるかどうか,Step 4では神経障害性疼痛が痛みのすべての原因であるかどうか,Step 5では痛覚過敏が誘発される現象があるかどうか,Step 6では痛みの部位に痛覚過敏の既往歴があるかどうか,Step 7では痛覚過敏による併存疾患の有無を評価する。しかし,このアルゴリズムでは,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛の鑑別方法が明確でない。そこでこの鑑別に参考としているのが,デルファイ法を用いて,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛にどのような特徴があるかを調べた報告である(表1)4)。専門家のコンセンサスが高かった上位の特徴を参考に,アルゴリズムの侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛を評価し,Stepを進めていくとよい。
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