特集 産科ICU
2.妊産婦における生理学的特徴—ICU管理の注意点と胎児の評価
伊藤 雄二
1,2
Yuji ITO
1,2
1東京ベイ・浦安市川医療センター 産婦人科
2西吾妻福祉病院 産婦人科
pp.267-285
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200266
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妊娠によって,子宮の著しい変化のみならず,妊産婦の全身にはさまざまな変化が起こる。その一部は母体の内分泌学的変化によるものだが,なかには子宮内の胎児の発育のために必要な反応も含まれる。このような変化は妊娠初期から起こり,妊娠の終了とともに急速にほぼ妊娠前の状態に戻る。
生理学的変化の背景にあるメカニズムについては明らかとなっていないことも多い1)が,最も大きな影響を与えているのは,主に胎盤で産生されるエストロゲンとプロゲステロンの著しい増加である2)(図1)。これらの性ステロイドホルモンは,非妊娠時に比べてはるかに高い血中濃度を示すため,妊産婦の全身の臓器・器官に影響を及ぼす。なかでも循環器系,腎機能などは非妊娠時に比べて機能が著しく亢進する。したがって,合併症のために臓器の予備能が低下している妊産婦は,妊娠中にそれらの臓器不全が起こる可能性がある。そのため,合併症妊娠の管理には,妊娠に伴う妊産婦の生理学的変化に関する詳細な知識が必要となる。本稿では,妊産婦の生理学的変化とICU管理の注意点,胎児の評価について解説する。
Summary
●妊産婦はさまざまな生理学的変化をきたしており,ICU管理では注意する必要がある。
●加えて,胎児の状態,分娩時期や分娩方法を考慮した管理が必要である。
●胎児モニタリングにより,胎児の生理学的反応や経時的変化を把握し,対応することが重要である。
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