特集 産科ICU
1.妊産婦死亡率,合併症の疫学的変遷—妊産婦の高齢化に伴い合併症の構成はどのように変化しているのか?
石川 浩史
1
Hiroshi ISHIKAWA
1
1神奈川県立こども医療センター 産婦人科
pp.259-265
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200265
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The Global Burden of Disease,Injuries and Risk Factors Study 2013(GBD 2013)によると,2013年に全世界では29万件の妊産婦死亡があったと推定されている。2000年にニューヨークで開催された国連ミレニアムサミットで採択された,ミレニアム開発目標Millennium Development Goals(MDGs)において,1990年から2015年までに妊産婦死亡率を75%減少させるとの目標が謳われた。1990年の全世界での妊産婦死亡は約38万人,妊産婦死亡率は380であった。しかしながら,2013年時点の全世界での妊産婦死亡は約29万人,妊産婦死亡率は210であり,MDGsの達成は悲観視されている(図1)1)。本稿では,我が国における妊産婦死亡と妊産婦死亡率の変遷を追い,その背景にある要因についても解説する。
Summary
●我が国の妊産婦死亡の最大の原因は産科危機的出血であるが,そのなかには羊水塞栓症が多く含まれていることが近年明らかになってきた。
●妊娠高血圧症候群に関連した疾患は昔も今も妊産婦死亡の主要原因である。
●肺血栓塞栓症や脳血管疾患など,相対的に増加傾向にある死亡原因があり,これらは妊産婦の高年齢化と関係している可能姓がある。
●産科医と集中治療医の密接な協力による妊産婦救命が必要である。
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