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妊婦は,生理学的に特異な変化を示し,検査やバイタルサインの正常値も一般成人とは異なる。また,常位胎盤早期剝離,妊娠高血圧腎症,羊水塞栓などの妊婦特有の疾患もあり,母体だけでなく胎児という2人目の患者に対処するため,薬物や放射線の間接的な影響も常に考慮しなければならない。したがって,妊産婦に対する管理は,一般成人と同じようにはできないことが多く,産科ICU(重症で集中管理が必要な妊産婦の入院施設)分野は,産科医を中心に独自に発展してきた傾向があり,集中治療医もあえて積極的にかかわってこなかった経緯がある。
今「産科集中治療は誰がやるのか」と問われれば,今日の集中治療領域の高度化から産科分野だけが取り残されるわけにはいかず,麻酔科,循環器科,脳外科,腎臓内科,呼吸器内科など,それぞれの専門医とともに,集中治療医に大きな役割を果たしていただかなければならないのは言うまでもない。院内急変の対応は,集中治療医が果たすべき重要な役割であり,産科の高度急性期においては,緊急帝王切開への移行をスムーズにすることが重要である。また,胎児のことを考慮すれば新生児科医,母体の精神的なサポートには助産師とともに集中治療看護師もかかわる必要がある。すなわち,1つのチームを構成しなければ,対応することができないと言える。日本のMFICU(Maternal-Fetal Intensive Care Unit)は現在,産科医が中心のフィールドであるが,集中治療医とともに,このチームが活躍する場として,産科ICU部門を充実させることがこれからの産科医療にとって必要なことである。
今回の特集は,多くの集中治療医が,あまり馴染みのない妊娠に伴う生理学的変化を知ったうえで,診断,治療が一通り理解できることを目的とし,産婦人科医はもちろん,救急医,集中治療医,麻酔科医,脳外科医,総合内科医,循環器内科医,家庭医,薬剤師の方々に執筆していただいた。
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