特集 心臓血管外科 後編
術後合併症
【コラム】止血薬のエビデンス—トラネキサム酸,カルバゾクロム,アプロチニン
飯田 泰功
1
Yasunori IIDA
1
1済生会横浜市東部病院 心臓血管外科
pp.158-160
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200249
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心臓血管外科手術において,体外循環中には血液希釈に加え,凝固因子や血小板が減少,凝集能が低下し,血液と人工心肺回路との接触活性による炎症反応が惹起され,トロンビンが大量に産生される。さらにトロンビンは凝固系を活性化するのみならず,線溶系も活性化し,結果的に凝固線溶系全体を亢進する1)。線溶系亢進に伴って活性化プラスミンが増加する結果,凝固能低下をきたして術中・術後の止血に難渋したり,異常出血が起こることがある。本コラムでは心臓血管外科手術患者を中心に,各種止血薬(トラネキサム酸,カルバゾクロム,アプロチニン)のエビデンスについて述べる。
Summary
●トラネキサム酸は全身投与,局所投与ともに止血効果が報告されているが,体外循環前の投与にはさらなる検討を要する。全身投与における重篤な合併症として,痙攣が知られている。
●カルバゾクロムは50年以上用いられている止血薬だが,トラネキサム酸との併用の報告はあるものの,単独使用についてのエビデンスは乏しい。
●アプロチニンは炎症反応を抑制し,出血量を減少させることが報告されている。しかし,トラネキサム酸,ε-アミノカプロン酸と比較すると死亡率,腎機能障害発生率が高いとする研究もあり,さまざまな論争を引き起こしている薬物である。
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