特集 産業医学と臨床検査
Ⅱ.有害因子と臨床検査
2 化学的因子
7 クロム
𠮷川 博
1
Hiroshi YOSHIKAWA
1
1岐阜大学医学部公衆衛生学教室
pp.1377-1381
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912374
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□産業とクロム
クロム(Cr)は原子量51.99,融点1905℃,沸点2,200℃,比重6.92の銀白色の光沢ある金属である.クロムは2−から6+までの酸化状態を持つが,通常,われわれが接するクロム化合物は三価と六価のものである.金属クロムを塩酸や硫酸に溶解させると二価のクロムとなるが,不安定で,酸素により三価のクロム塩になる.六価クロム化合物は黄色ないし橙赤色で,強い酸化剤となり,酸化クロム,クロム酸塩,重クロム酸塩などがよく知られている.これらの六価クロム化合物は,酸性溶液や有機物質の存在下で容易に還元されて三価クロムになる.六価クロム化合物は生体内に取り込まれた場合にも,生体膜または細胞膜を容易に透過した後に還元されて三価クロムになると言われている.
クロムは硬度・融点が高く,耐蝕性,耐摩耗性に優れているので,多種類のステンレス鋼の重要成分として用いられている.クロムメッキや皮なめし,また耐火煉瓦,顔料,鉄(Fe)・クロム合金などや化学工業で広く用いられているが,産業には主として六価クロム化合物が使用されている.
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