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ドレーン留置の目的は貯留した液体や空気を体外に排出することであるが,そこには①治療,②予防,③インフォメーションとしての役割がある。
①治療的ドレーン:体内にある血液や滲出液,空気などで正常な臓器機能が障害されている場合に,それらを体外に誘導するドレーンである。心タンポナーデに対する心囊ドレナージや気胸に対する胸腔ドレナージなどが当てはまる。
②予防的ドレーン:予測される血液や滲出液,空気などの貯留を防止するためのドレーンで,手術時に留置するドレーンが当てはまる。
③インフォメーションドレーン:術後体内で生じた出血やエアリーク,感染などの情報をすみやかに知るためのドレーンである。
術中に挿入するドレーンは予防とインフォメーションの役割が主である。手術時は閉胸前にあらゆる部分の止血を確認するが,時には出血傾向などが原因で外科的に止血できない出血が残ることがある。また,心臓・胸部大血管手術では術後出血のリスクがある。心囊・前縦隔といった限局されたスペースに,ある一定以上の血液などが貯留すると心タンポナーデを生じる可能性があるため,ほぼ全例で心囊・前縦隔ドレーンを留置する。術中に胸膜が開放され,縦隔と胸腔が交通した場合には,胸腔内に血液や空気が入り込むため,胸腔ドレーンを留置する。
また,術後に気胸や血胸,持続する胸水に対して治療的ドレーンを留置することがあるが,本稿では術中に留置するドレーンの管理について解説する。
Summary
●ドレーン留置には治療,予防,インフォメーションとしての役割がある。
●ドレーンは適切な位置に留置されないと,その役割が十分に果たされない。心臓・胸部大動脈手術時にはどういった腔が開放されるのか,また,ドレーンはどこを経由して留置されるか,その解剖学的な理解が必要である。
●ドレーン管理に伴うさまざまなトラブル例を熟知し,それを回避することが肝要である。
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