特集 心臓血管外科 後編
心臓血管外科における周術期管理
5.胸骨正中切開術後の心肺蘇生—その特殊性と再開胸を含めた対応
神尾 直
1
,
松永 渉
2,3
,
大塚 祐史
3
Tadashi KAMIO
1
,
Wataru MATSUNAGA
2,3
,
Yuji OTSUKA
3
1自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
2横須賀市立うわまち病院 麻酔科
3自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科
pp.49-59
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200240
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心臓手術後の心停止は一定の頻度で起こり得るものであるが,他の場合の心停止と異なり,大量出血や心タンポナーデ,グラフト機能不全を含めた周術期心筋虚血,緊張性気胸,ペーシング不全などが原因であることがほとんどであり,早期の対応により蘇生できる可能性が十分にある病態である1,2)。
しかし,心臓手術後患者の胸骨圧迫は,胸郭内構造物および心血管縫合部の外傷リスクが高く,必要最小限にする必要がある2)ことや,盲目的なアドレナリン投与により,自己心拍再開後に重度の高血圧から大量出血する危険性がある3)ことなどから,通常の心肺蘇生cardiopulmonary resuscitation(CPR)のアルゴリズムと区別する必要がある。
このような背景をふまえ,2009年に欧州心臓胸部外科学会(EACTS*1)が,心臓手術後に特化した蘇生ガイドライン(以下,EACTSガイドライン)2)を発表した。本稿では,日本の実情を考慮に入れながら,心臓手術後心停止のCPRについて考察する。
Summary
●心臓手術後心停止のCPRに関しては,他の場合のCPRと異なる対応が必要となる。
●VT/VFの場合,1分以内に除細動を行える場合は,胸骨圧迫を即座に行うべきではない。
●徐脈性不整脈から心停止となった場合,まずはペーシングを行う。
●ルーチンにアドレナリンの投与を行うべきではない。
●5分以内に蘇生しない場合は胸骨圧迫を行い,可能なかぎり早期に再開胸を検討する。VA ECMOの導入も選択肢の1つとして考慮する。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.