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心筋梗塞などにより心筋に大きな障害が加わると,ダメージを受けた心筋は収縮力を失い,心機能が低下する。その障害に対する心筋のリモデリングの過程で,多かれ少なかれ心拡大傾向がみられるが,広範囲の心筋障害が発生した場合,心拡大の程度も大きくなり心機能の低下がより進行し,重症心不全状態へと陥る。このように心拡大を伴った重症心不全に対し,左室形成術は左室形態を修復して左室容積を縮小することで,心収縮能の改善を目指す手術である。
Summary
●左室形成術は,心筋梗塞などの心筋障害により左室形態の異常が局所的,あるいは広範囲に広がり,心拡大が進み心機能低下をきたした左室に対し,その左室形態を修復して左室容積を縮小することで,心収縮能の改善を目指す手術である。
●手術術式は,直接閉鎖術,Dor手術,SAVE型手術,オーバーラッピング手術,Batista手術がある。左室拡大に伴い僧帽弁閉鎖不全症を合併し,著しい心機能低下をきたした場合,左室形成術とともに僧帽弁閉鎖不全を修復する手術を合わせて行い,左室機能改善と予後改善を目指す。近年では,虚血性心筋症に対し左室形成術を行うことがほとんどであり,拡張型心筋症に対しては,補助人工心臓治療,心臓移植が選択され,左室形成術(Batista手術)はあまり行われない。
●左室壁運動がdyskineticな場合は,左室形成術の絶対的適応である。壁運動がakineticな場合,術前の左室収縮末期容積係数(LVESVI)が80mL/m2以上を手術適応の目安とする。
●心臓移植に対し,深刻なドナー不足の問題を抱えている日本において,心臓移植・補助人工心臓治療とともに重症心不全に対する外科治療の選択肢の1つとして,今後も左室形成術は重要な役割を果たしていくと考えられる。
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