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急性大動脈解離は,突然の発症後,急速に状態が悪化し,死の転帰をたどることもまれではない循環器緊急疾患である。緊急治療を要する他の胸部大動脈疾患(胸部大動脈瘤破裂,切迫破裂,外傷性大動脈損傷)を加え,急性大動脈症候群acute aortic syndromeと称することもある1,2)。本症は,大動脈分枝の灌流障害を高率に合併し,虚血臓器により多彩な臨床像を呈するため,各臨床像に対応した適切な内科治療,外科治療を行うことが重要である。また,近年の治療成績の向上に伴い,急性期のみならず遠隔期の予後改善も視野に入れた治療法も提唱されつつある。
本稿では,まず急性大動脈解離の基本的な病態を述べ,手術適応と術式を解説する。また,本症特有の合併症と術後管理についても解説する。
Summary
●急性大動脈解離の治療成績は,患者の状態の影響を強く受ける。臓器灌流障害の診断は,臨床所見と画像所見から総合的に判断する。
●急性A型解離は原則的に手術を第一選択とする。偽腔閉塞型では,安定し大動脈径が小さい場合には保存的治療を選択することもある。complicated typeの急性B型解離も手術を考慮する。
●急性大動脈解離の手術は,送血路の工夫,大動脈遮断の回避,脆弱な解離した大動脈に対する操作,心タンポナーデ対策,臓器灌流障害対策などに留意する。
●急性A型解離の中枢側再建法に関しては,交連部吊り上げや適切な接着製剤使用による偽腔閉鎖により,大動脈弁とValsalva洞の温存が可能である。大動脈弁輪拡張症やエントリーが基部に存在する症例などでは,大動脈基部再建手術を実施する。若年例では自己弁温存手術を検討する。
●急性A型解離の遠位側切除範囲は,年齢,患者状態,エントリー部位などから総合的に決定する。
●急性B型解離と同様,急性A型解離術後も循環管理が重要である。出血,呼吸不全,腎障害,脳障害などの合併症も高率に認めるので,これらに対応した管理を要する。
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