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■Caの代謝調節機構
Caは原子番号20,原子量40のアルカリ土類金属の1つで,イオン化すると2価の陽イオンとなる。すなわち,1mmol=2mEq=40mgであるから,1mmol/L=2mEq/L=4mg/dL(40mg/L)と単位変換できる。血清Ca濃度は,欧米ではmmol/Lで表記されることが多いが,本邦では施設ごとにまちまちであり,解釈に際し注意を要する。
Caはその99%がヒドロキシアパタイト[Ca10(PO4)6(OH)2]として骨に分布し,残り1%のほとんどは細胞内のミトコンドリアや小胞体に取り込まれており,細胞外に存在するのは全体の約0.1%である。Caは神経伝達,筋の収縮,酵素活性の調節,血液凝固カスケード,細胞内シグナル伝達など,ほぼすべての細胞で重要な役割を果たしており,細胞外液中の総Ca濃度は,8.8〜10.4mg/dL(2.2〜2.6mmol/L),イオン化Ca(Ca2+)濃度は4.4〜5.2mg/dL(1.1〜1.3mmol/L)と極めて狭い範囲で厳密にコントロールされている。その制御は,主として副甲状腺ホルモンparathyroid hormone(PTH)と活性型ビタミンDによって調節されている(メモ1,図1-A,B)。したがっていずれかのホルモン作用が増強する病態で高Ca血症を生じることが多く,反対にいずれかのホルモンの分泌不全・作用不全で低Ca血症を呈することが多い。
Summary
●高Ca血症をきたす2大疾患は悪性腫瘍,副甲状腺機能亢進症であるが,カルシウム・アルカリ症候群やビタミンD中毒の頻度が増している。鑑別診断には詳細な病歴や服薬状況の把握に加え,intact PTH,PTHrP,尿中Ca排泄の測定が有用である。
●低Ca血症の要因としては,ビタミンD欠乏と副甲状腺機能低下の頻度が高く,鑑別診断はPTH,ビタミンDにより行う。ICU領域では低Ca血症の頻度が高く,主としてPTHおよび活性型ビタミンDの合成障害と,末梢組織のPTH抵抗性が原因である。
●重症患者では血清総Caとイオン化Caを乖離させる要因が多いため,イオン化Caを直接測定し,評価することが望ましい。
●治療抵抗性の低Ca血症,低Ca血症にもかかわらずPTH低値である場合,低Ca血症と低K血症が合併している場合には,低Mg血症の関与を疑う必要がある。
●高Ca血症,低Ca血症とも急性・症候性である場合,すみやかな治療介入が必要である。
●高Ca血症の治療は輸液療法,カルシトニン,ビスホスホネートが中心となり,フロセミドの役割は限定的である。糖質コルチコイド,シナカルセト,デノスマブ,血液透析なども状況に応じて使用される。
●敗血症などの重症ICU患者における低Ca血症と死亡率に関連があることは明らかだが,Ca補充の是非については結論がでておらず,症例ごとに検討する必要がある。
●経静脈的な低Ca血症の是正は,組織障害性の低いグルコン酸Caをモニタリング下に投与する。
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