特集 保健婦にとっての研究
I章 総論
研究をサポートする体制整備
岩室 紳也
1
1神奈川県平塚保健所
pp.797-802
発行日 1998年9月25日
Published Date 1998/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901852
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いま,なぜ,研究すること,研究をサポートすることが大切か
ある市役所の若い保健婦が辞めて大学に編入学したという話を聞き,心配していたことが現実になったと危機感を抱いた。保健に関する情報がマスコミをはじめとして多くのルートから流れ,住民の意識や知識が専門職と同等,あるいは時によってはそれ以上の状況になっている。学校を出ただけで,免許があるだけではもはや通用しない。にもかかわらず公務員でもある公衆衛生分野の専門職は「日常業務をこなすことで手一杯である」と言い訳をし,「現場・地域・住民重視」という錯覚のもとで自らが学習・研鑽することを怠ってきた。住民のディマンドが少なく,保健婦がただ一生懸命働いていただけで住民から感謝された時代もあったようだが,もはやそのような時代ではない。「日常業務最優先,研究は専門家に任せる」という発想のつけが,若い保健婦の離職だけではなく専門職としての存在意義の低下という状況を各地で生んでいると言い切るのは少し酷であろうか。「そんなことを言われる筋合いはない。ちゃんと毎年1人ずつ学会発表をさせてきたし,それなりの研究もしてきた」という先輩方に逆に質問したい。新卒の保健婦が出身地,出身校から何百キロも離れた町役場に就職した動機が「勉強させてくれる,学会発表や研究をさせてくれる職場だから」というのをどう考えているのか。
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