特集 ARDS Berlinその後
回答3:自発的に生じる大きい1回換気量は原則として気にせず,できるだけ早期の離床をはかる
讃井 將満
1
Masamitsu SANUI
1
1自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔・集中治療部
pp.42-45
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200128
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■どんな設定にしても1回換気量が
多くなりすぎるときはどうするか?
積極的な1回換気量の制限は行わない
●1回換気量について
この症例のようなARDSばかりでなく,拘束性の急性呼吸不全患者において,自発呼吸努力により“1回換気量を小さくしたいにもかかわらず,どうしても大きくなってしまう”現象は多くの臨床家が遭遇する問題であろう。2000年のARMA研究1)後に,6mL/kg予測体重の低容量換気low tidal vetilationを目標とする人工呼吸器設定がいわば標準として認識されるようになり,これを守らない臨床研究は研究と見なされず2),これを守らない診療は標準とみなされない3)風潮が支配的である。
現在広く受け入れられている人工呼吸器誘発肺傷害ventilator-induced lung injury(VILI)のメカニズムは,多くの実験的データによってその妥当性が確かめられてきた4)。PEEPの具体的な決め方には依然として定説が得られていないものの,理路整然としたそのメカニズムは,多くの臨床家,臨床研究家にとって直感的に受け入れやすいものである。実際にそれを支持する臨床研究も登場した。ARDS患者に対する肺保護換気による急性期死亡率の改善を初めて示した1998年のAmatoら5)の無作為化比較研究(RCT)や,プラトー圧を30cmH2O以下に制限し,目標1回換気量を6mL/kg予測体重にすることにより急性期死亡率改善効果を示した大規模RCTであるARMA研究1)は,ほとんどすべての集中治療医が知る研究であろう。その結果,2000年には低容量換気がARDSにおける標準換気法としての地位を確立した。
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