特集 PCAS
Part 2 PCASの予後予測
3.バイオマーカーによる予後予測—現状と臨床応用への課題
井手 健太郎
1,2
Kentaro IDE
1,2
1トロント小児病院 集中治療科
2国立成育医療研究センター 集中治療科
pp.623-633
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200099
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心停止後症候群post cardiac arrest syndrome(PCAS)の予後を予測するために,画像検査や電気生理学的検査とともにバイオマーカーを用いた研究が進められている。本稿ではその現状と,臨床応用への課題について解説する。
Summary
●バイオマーカーによる心停止後症候群(PCAS)の予後予測に関する研究は近年積極的に行われており,関連する報告が増加している。
●バイオマーカーの利点は,①薬物使用下でも評価可能,②画像検査のような患者移動が不要,③電気生理学的検査のような特殊な装置や技術が不要なことである。
●バイオマーカーの欠点は,①脳損傷に特異的ではないバイオマーカーが多い,②検体採取のタイミングの影響が十分に検討されていない,③測定キットとメーカーごとに標準値が異なることである。
●検体採取のタイミング,予後不良の定義と評価時期などは報告によって大きく異なり,現時点で臨床に用いることができるバイオマーカーは存在しない。また,低体温療法などの新しい治療戦略が,バイオマーカー値および予後に影響を与えるため,結果の解釈を慎重に行う必要がある。今後は,厳密で統一された手法を用いた大規模な研究にて,臨床に適用できるバイオマーカーのカットオフ値を定め,その妥当性の検証もなされる必要がある。
●現時点で,単一バイオマーカーでの正確な予後予測はできず,バイオマーカーとその他の予測手法(臨床所見,画像検査,電気生理学的検査)を組み合わせた手法の研究が必要と考えられる。
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