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多要因が重複して発症する人工呼吸器関連肺炎(VAP)のような疾患にはbundle(束の意味)によるアプローチが有効である。2010年5月,Institute for Healthcare Improvement(IHI)の“人工呼吸器バンドルVentilator Bundle”に「グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)を用いた毎日の口腔のケア」が加わった。その根拠として3つの文献1~3)が引用されているが,0.12%もしくは0.2%のCHGを使用した研究であり,過敏症の問題でCHGの使用に大幅な制限のある我が国では,そのまま実施することは困難である。
また,最近発表されたVAP予防のための口腔ケアにおける歯ブラシの使用についてのメタ解析4,5)では,歯ブラシの使用によるVAP発生の減少は明らかではなかった,と結論づけられている。しかしながら,解析の対象となった研究の「口腔のケア手順」には問題点があると思われ,そこから導き出されたメタ解析の結果ともなれば信頼することができるだろうか?
これは筆者の推測・持論であるが,CHGによる口腔のケア1~3)のように薬物がメインの介入ではコンプライアンスが良好であれば,術者(通常は看護師)や施設間の差は生じにくいのに対し,歯みがきのようにスキルが影響する介入では,一定以上のスキルの質を維持することが容易ではない。
そこで本稿では,「口腔のケアによるVAP予防」の臨床にすぐに役立ち,新たなエビデンスを示す研究を実施するために必要と思われる口腔のケアのポイントについて解説する。
Summary
●VAP予防に何らかの口腔のケアは必須であり,「グルコン酸クロルへキシジン(CHG)を用いた口腔のケア」はIHIの人工呼吸器バンドルの1つに採用されている。
●口腔のケアにおいて,バイオフィルムを物理的に破壊する歯みがきは重要な手技である。
●歯みがきによって口腔・咽頭に散乱した菌を含む「汚染物の回収」が不十分であると,VAP発生のリスクを低減できないと思われる。
●CHGの使用に制限のある我が国では,CHG以外の抗菌性薬剤を口腔・咽頭に散乱した菌に応用する価値があると思われる。
●口腔のケアのコンプライアンスを向上させるための工夫も重要である。
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