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「痛み」は,身体的だけでなく精神・心理的,社会的,そして実存的(スピリチュアル)な要因によって形成されるもので,このtotal pain(全人的苦痛)をケアすることが,痛みの治療である。薬物治療では,中等度から強い苦痛が存在するか,発生することが明らかな場合に,オピオイド性鎮痛薬の投与を考慮する。この考え方は,癌患者の緩和医療のテキストでよく見かける記述であるが,緩和医療に特異的なのではなく,痛みの治療すべてに共通するものであり,ICUの患者の強い苦痛も対象になるといえる。
本稿では,オピオイド性鎮痛薬の特徴と投与時の注意点,具体的な投与法を,ICUで用いることが多いモルヒネとフェンタニルを中心に述べ,その他のオピオイドや鎮痛法についても解説する。
Summary
●ICUの患者の強い苦痛もオピオイド性鎮痛薬(以下,オピオイド)による症状緩和の対象である。
●オピオイドの静脈内投与によって鎮痛効果を得るには,各薬物の特性や有効な鎮痛効果を得るために必要な投与量や中枢神経(効果部位)濃度は個人差が大きいことに注意し,ローディングやタイトレーションによって血中濃度を上昇させ,patient-controlled analgesiaや持続静脈内投与で血中濃度を維持するようにする。
●モルヒネは,作用発現まで20分程度かかり,効果は約2.5時間持続する。高度な腎機能低下患者や透析患者には不向きである。
●フェンタニルは効果持続時間が短いので,持続投与が必要なことがほとんどである。血行動態への影響が少ないこと,代謝産物に薬理活性がないことが利点である。
●海外からはICUにおけるレミフェンタニル投与の有用性,特に人工呼吸器管理期間の短縮や神経機能評価が早期に可能な点が報告されている。
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