特集 急性呼吸不全
第2章 呼吸器疾患各論
9.肺高血圧症に伴う右心不全―その基礎的病態と利用可能なエビデンスに基づく治療の原則
齊藤 茂樹
1
Shigeki SAITO
1
1Section of Pulmonary Diseases, Critical Care and Environmental Medicine Department of Medicine, Tulane University School of Medicine
pp.857-866
発行日 2013年10月1日
Published Date 2013/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100596
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
肺高血圧は,平均肺動脈圧が25mmHg以上の状態と定義され,表1のように5つのグループに分類される1,2)*1。
右心不全に関しては普遍的に受け入れられている定義はないが,右室充満圧が上昇している(右房圧8mmHg以上)にもかかわらず心拍出量が低く(2.5L/min/m2以下),全身の血液灌流が低下している状態と定義できよう3)。
いずれの型の肺高血圧も右心不全をきたし得るが,前述のような本格的な右心不全がみられるのは,典型的には肺動脈性肺高血圧症(グループ1)あるいは慢性血栓塞栓性肺高血圧症(グループ4)である。左心疾患に伴う肺高血圧(グループ2)と,肺疾患や低酸素に伴う肺高血圧症(グループ3)でも右心不全の臨床的徴候(特に右室拡張機能不全と右心充満圧の上昇に関連した体液貯留)がみられることがあるが,低心拍出量を伴う右室不全はグループ1ほどにはみられない。逆に,大きな動静脈奇形(遺伝性出血性毛細血管拡張症)や慢性溶血性貧血などでは,心拍出量がむしろ著しく上昇した状態で,右室不全の徴候を呈することがある(いわゆる高心拍出心不全)4)。
本稿では,グループ1を中心に,病態と治療法について解説する。
Summary
●肺高血圧症に伴う重症右心不全は,ICUでの綿密な管理が必要である。非侵襲的・侵襲的モニターを上手に利用しよう。
●治療の基本原則は,誘因の除去,右室前負荷の最適化,右室収縮能の増強,右室後負荷の低減,全身血圧・組織灌流の維持である。
●不整脈には積極的に対応しよう。
●専門家へのコンサルトや専門施設への転送も,ためらわずに行おう。
Copyright © 2013, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.