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ICUにおいては,急性呼吸不全を治療する際,従来の治療には反応しない症例に遭遇することは少なくない。
このとき,まず初めに行うべき思考プロセスとしては,最初の診断が正しいかどうかを疑ってみることである。次に,新たな病態が進行している,診断は正しいが治療が適切でない場合または不十分である場合などを考える。多くの場合,さらなる検査を施行していくことになるが,気管支肺胞洗浄bronchoalveolar lavage(BAL)は頻繁に行われる手技検査である。BALは,比較的低い侵襲でベッドサイドで施行でき,肺局所に生じている現象に対する情報収集が可能である。症例によっては,気管支内生検endobronchial biopsy(EBB),経気管支肺生検transbronchial lung biopsy(TBLB),外科的肺生検surgical lung biopsy(SLB),開胸肺生検open lung biopsy(OLB),またはビデオガイド下胸腔鏡下肺手術video-assisted thoracic surgery(VATS)が行われることもある。
本稿では,ICUにおけるBALと肺生検lung biopsyの実際,考慮すべき患者層,病態,経過について,さらにBALや肺生検が治療方針や予後にどのような影響を与えるかについて述べる。内容については,できるだけエビデンスに基づいた解説を心掛けるが,筆者の米国における経験による記述も含まれることも了承していただきたい。
Summary
●BALは,人工呼吸器管理下患者も含めたICU患者に対して比較的安全に行える検査である。
●ほとんどのびまん性肺疾患に対してBALの結果は特異度が低く,診断をつける補助的検査にとどまる。
●ルーチン的BAL検査がびまん性肺疾患患者の予後改善につながるというエビデンスは,いまのところない。
●TBLBが有効とされる間質性肺疾患患者は,肺の小さなサンプルで診断がつけられ,病変が小葉中心性であるものに限られる。
●SLBは,検査に対する患者の耐性,pre-test probability,検査結果が予後の改善につながるか,などを総合的に判断して有益であると考えられる場合に行うべきである。
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