特集 術後管理
7.術後患者に対する静脈血栓塞栓症の予防―ICU入室では全例でまずリスクアセスメントを
松島 一英
1
MATSUSHIMA, Kazuhide
1
1Penn State College of Medicine 外科
pp.289-302
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100415
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【症例】
65歳の男性。虚血性心疾患の既往がある。膵臓癌に対して,膵頭十二指腸切除術が施行された。術後,挿管されたままICU入室。疼痛管理の目的で硬膜外カテーテルが留置されている。執刀した外科医からの申し送りでは,ルーチンの静脈血栓塞栓症予防の指示を受けた。
…
集中治療医であるあなたは,どのような予防法を,どのタイミングで開始し,どれだけ継続すればよいのであろうか?
…
日本で周術期における静脈血栓塞栓症venous thromboembolism(VTE),具体的には,深部静脈血栓症deep vein thrombosis(DVT)と肺塞栓症pulmonary embolism(PE)に強い関心が寄せられるようになったのは,ここ20年ほどである1,2)。一方,欧米では,それ以前よりVTEが周術期の深刻な合併症であるという認識が広まっており,積極的な予防対策がなされてきた3)。現在,米国で,VTEは予防し得る死亡の主な原因という認識が定着し,予防施行率やVTE発症率は,医療評価の対象となっている(臨床メモ1)。
現在得られるデータの大部分は欧米から報告されたものであり,日本を含めたアジア諸国からの報告はいまだに少ない1,4~8)。あらかじめこのような事実を述べたのは,人種や環境などの影響により,日本でのVTEを,欧米のそれと同様に考えてよいとは必ずしも断定できないためである9,10)。できるだけ日本の報告も紹介したつもりであるが,本稿で記述されている多くの内容が,欧米からの報告をもとにしていることを念頭において読み進めていただきたい。
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