今月の臨床 静脈血栓塞栓症─予防・診断・治療
静脈血栓塞栓症のリスク評価
平井 久也
1
,
金山 尚裕
1
1浜松医科大学産婦人科学講座
pp.113-117
発行日 2011年2月10日
Published Date 2011/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102562
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はじめに
深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)および肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)は高齢化社会の到来や,生活習慣の変化に伴いわが国でも年々増加していると考えられている.平成20年厚生労働省の患者調査では約7,000人の患者がPTEの診断で治療を受けていると推定され,統計上も患者数は増加していることが示されている1).また,PTEはひとたび発症すると重篤な症状および致死に至る割合も非常に高いことが特徴で,日本臨床麻酔科学会調査では周術期発症のPTEの死亡率は28.8%となっている2).一方,産婦人科領域においても婦人科開腹手術症例における周術期DVT,PTEは増加傾向にあり,産科領域では平成21年の妊産婦死亡における産科的肺塞栓症の占める割合は53例中9例で,分娩後出血に続き第2位となっている3).
DVT,PTEを予防する目的で2004年にガイドラインが作成され4),各施設で予防対策を講じることが広く普及してきているが,ガイドライン上も,個々の症例における背景因子や病状などを検討し,それぞれのリスクにあった対策を行うよう推奨されており,すなわち患者1人1人のDVT,PTE発症リスクを的確に把握することが有効な予防対策,治療戦略につながると認識することが重要である.本稿では産婦人科領域におけるDVT,PTEについて,ガイドラインに沿った疫学的リスクの評価,および血液凝固学的指標に基づいたDVTスクリーニングの知見について述べる.
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