特集 術後管理
6.術後呼吸不全の予防と治療
下薗 崇宏
1
SHIMOZONO, Takahiro
1
1神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科・集中治療部
pp.275-287
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100414
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
術後呼吸器合併症postoperative pulmonary complication(PPC)は,周術期における死亡や合併症の主要原因の1つ1)であり,その発症頻度は定義によって大きく異なるが,2~40%2)とも報告されている。また,米国外科学会(ACS)の「手術の質改善プログラム」の調査3)では,心血管系合併症,呼吸器合併症,感染性合併症,静脈血栓性合併症のなかで,呼吸器合併症が最も費用を要し,在院日数を最も長引かせる合併症の1つであることが示されている。このように,発症頻度や予後に与える影響の点において,PPCは術後合併症のなかでも特に重要な合併症である,といえよう1,4)。
PPCには,軽度の無気肺などのように自然軽快する軽症のものから,ARDSなどのように厳重な呼吸管理を必要とする重症の術後呼吸不全まで,さまざまな病態が含まれる5)。そのため,周術期の呼吸管理において,最も重要なことは,PPC発症の高リスク患者を早期に同定し,それらの患者に対して可能な予防策を講じ,術後呼吸不全を未然に防ぐような管理を行うことである。
本稿では,PPCおよび術後呼吸不全の危険因子,予防法,治療を中心に,周術期の呼吸管理について述べる。
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.