特集 End-of-life
5.米国における終末期医療―withdraw,心臓死後臓器提供,教育,研究
松崎 孝
1
,
酒井 哲郎
2
MATSUSAKI, Takashi
1
,
SAKAI, Tetsuro
2
1岡山大学医学部 集中治療部
2University of Pittsburgh Medical Center, Department of Anesthesiology
pp.35-42
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100379
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重症疾患を抱える患者とその家族にとって,集中治療室(ICU)とは,生命を取り戻すための現代医療の最重要基点であると同時に,治療の甲斐なく生命を失い,愛するものを見送る場所でもある。米国では,全死亡のおよそ22%がICUで発生している1)。
ICUでの治療は,医療の最先端の知識と技術が用いられるために,往々にして治験的であるともいえるが,病態がそれらの最新治療にも反応しない場合は,患者家族および医療チームのゴールは,疾患の“完治”から苦痛の“緩和”へと大きく変化する。つまり,生命の最終段階での医療(end-of-life care or terminal care)へと移行する。
この治療上の方向転換は容易ではない。end-of-life careへの移行を難しくする要因は,以下の2点が挙げられる。
・患者(および家族):死にたくない(失いたくない)という欲求
・医療チーム:患者の死期を確実に判定できないこと
現在,ICUにおけるend-of-life careのガイドライン作成に対しての最大の障害は,そのガイドラインが,臨床試験により確立されたエビデンスに基づくのではなく,死に対する倫理的かつ合法的な原則に基づかざるを得ないところにある。
本章では,米国におけるend-of-life careの実際に関して述べる。
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