医療問題
脳死体からの臓器提供に関わる米国視察記
坂井 信幸
1
,
菊池 晴彦
1
1国立循環器病センター脳神経外科
pp.187-198
発行日 2000年2月10日
Published Date 2000/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901853
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I.はじめに
臓器移植法が平成9年10月に施行されてから2年が経過した.本年2月に高知から第1例目の脳死体からの臓器提供が行われたことは記憶に新しい.その後東京,宮城,大阪から相次いで臓器提供が行われ徐々に移植医療への理解が深まりつつある.移植医療は善意の臓器提供者(ドナー)が現れなければ成り立たない特殊な医療であり,法律施行後しばらくの間臓器提供者が現れなかった時は,臓器提供意思表示カード(ドナーカード)の普及不足をはじめとする社会全体の移植医療に対する無関心がその根底にあると言われた.脳死をヒトの死として受け入れ,臓器や組織を提供するかどうかは個人の自由意思に任されているが,われわれ脳神経外科医をはじめとするドナー治療医は,脳死・臓器提供・移植医療に関して正しい知識と認識を持ち,善意の提供者を手助けする義務がある.本年1月末から2週間,すでに15年間以上移植医療を進めてきた米国の実状を視察する機会を得たので,わが国の制度との比較を行い報告する.
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