別冊秋号 オピオイド
PART3 社会編
33 米国のオピオイドエピデミック
酒井 哲郎
1
1ピッツバーグ大学 麻酔周術期科
pp.219-224
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200315
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米国疾病管理センター(CDC)によると,2021年4月において米国全体の薬物中毒死は1年間に10万人を超えた(前年比28.5%増)。なかでも合成麻薬(フェンタニルなど),向精神薬(メタンフェタミンなど),さらにコカインによる中毒死が顕著である。若年,白人,女性(2015年の女性薬物中毒患者数120万人に対し男性90万人),さらに地方部での増加が大きい。
特にオピオイドエピデミック(またはオピオイドクライシス)は米国における深刻な医療問題である。これらの麻薬は処方薬として合法的に,または違法に入手される。オピオイドエピデミックは除痛のため麻薬処方が増加した1990年代末から始まった。1999〜2020年に約84万人が薬物中毒死しており,このうちの50万人は麻薬(オピオイド)中毒による。これは米国で毎日130人が麻薬中毒死している計算になる。ヘロインエピデミックといわれた1979年でも死者は年間3000人未満,さらにはコカインエピデミックといわれた1988年でも年間死者数は5000人以下であったことを考えると,現在のオピオイドエピデミックは脅威的である。これによる全米経済損失は年間7兆8500億円に相当する。
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