特集 急性心不全
【コラム】治療薬としての2つのナトリウム利尿ペプチド
讃井 將満
1
SANUI,Masamitsu
1
1東京慈恵会医科大学 麻酔科 集中治療部
pp.756-763
発行日 2010年10月1日
Published Date 2010/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100350
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急性心不全(AHF)の治療薬として,本邦では遺伝子組み換え型ヒトA型(心房性)ナトリウム利尿ペプチド(カルペリチド:ハンプⓇ)が1995年に1),米国では遺伝子組み換え型ヒトB型(脳性)ナトリウム利尿ペプチド(nesiritide:NatrecorⓇ)が2001年にFDA(米国食品医薬品局)に認可された2)(メモ1)。カルペリチドに関しては,近年,各種の急性心疾患や急性腎傷害(AKI)に対する予防・治療薬としての研究が進み,フロセミドの腎臓に対する有害作用3)や,ドパミンの亡霊4)から逃れられる安堵感も手伝って,希望溢れる“心保護薬・腎保護薬”として本邦における急性心不全治療薬市場で成功を収め(図1),実にその使用頻度は70%にのぼる5)。しかし,この間,薬理学的に同族であり同じ受容体に作用するnesiritideは,“腎機能を悪化させるかもしれない”,“生命予後を悪化させるかもしれない”という懸念を払拭できず,従来の血管拡張薬にとって代わる存在足り得てはいない6)。
本稿では,主としてAHFに対するナトリウム利尿ペプチドの簡単な薬理学,カルペリチドとnesiritideそれぞれの臨床研究を概説し,2つを対比することによって,本邦におけるカルペリチドの現状と課題を明らかにしたい。
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