- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
- サイト内被引用
ナトリウム利尿ペプチド(NP)ファミリーは,保存性の高い17アミノ酸からなる環状構造を構造上の特徴とするホルモンファミリーである1,2)。心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial NP;ANP)が哺乳類の心臓から単離されて以来,ブタの脳よりB型NP(BNP),ウナギやサケ類の心臓から心室性NP(Ventricular NP;VNP),ブタやウナギの脳からC型NP(CNP)など,構造の類似するホルモンが次々と発見された。さらに近年,魚類ゲノムの研究からCNPには4種類の分子種(CNP-1~CNP-4)が存在することがわかったため3),NPファミリーは少なくとも7種類の分子種から構成されることが明らかになった(図1)。ANP,BNP,VNPは環状構造のアミノ末端側,カルボキシル末端(C末端)側の両方にペプチドの伸張(テールと呼ばれる)があるのに対し,CNPはC末端テールを欠くことが構造上の特徴である(図1)。NPファミリーは利尿をはじめ体液調節にかかわる様々な機能をもつことが知られているが,その作用様式から二つのタイプに分別することができる。ひとつは,心臓でおもに発現し,血流にのって体内を循環するタイプ(循環型)で,ANP,BNP,VNPがこれに相当する。もう一方は,脳や一部の末梢器官で傍分泌的に作用するタイプ(傍分泌型)で,CNPの多くがこれに相当する。
現存するなかで最も原始的な脊椎動物である円口類は1種類のNPしかもたない。メクラウナギ類のNPはC末端テールをもっているが,分子系統解析によりCNP-4に近いことがわかっている。また,ヤツメウナギ類のNPは,C末端テールを欠くCNPタイプで,CNP-4に最も近い。従って,NPファミリーの祖先はCNP-4型であったと考えられる4)。
Copyright © 2006, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.