Japanese
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特集 心筋障害とケミカルメディエーター
心不全とナトリウム利尿ペプチド
Diagnostic and Therapeutic Use of Natriuretic Peptide in Heart Failure
中村 元行
1
,
荒川 直志
1
,
平盛 勝彦
1
Motoyuki Nakamura
1
,
Naoshi Arakawa
1
,
Katsuhiko Hiramori
1
1岩手医科大学第二内科
1Department of Internal Medicine II, Iwate Medical University
pp.1079-1085
発行日 1995年11月15日
Published Date 1995/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901144
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はじめに
心臓組織から2種類のナトリウム利尿ペプチドすなわち心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が分泌されている1,2).ANPは,正常では主に心房から,拡張型心筋症などの不全心では心室筋からも大量に分泌されている3).BNPの分泌量は正常心ではごく少ない.しかし,不全心では心室筋で合成され血中に大量に分泌される4).また,心臓から分泌されるANPやBNPに類似したペプチド構造をもつC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管内皮細胞で合成分泌される5,6).
これらのペプチドの生理活性として重要なものには,①腎からの水—ナトリウム(Na)利尿作用,②レニン—アンジオテンシン—アルドステロン(RAA)系の抑制作用,③サイクリックGMP(cGMP)を介した血管平滑筋弛緩作用の3つがある.これらの作用はナトリウム利尿ペプチドの種類で強弱の違いが多少ある.例えば,等モル当りの水—Na利尿作用はANP=BNP≫CNP, RAA系の抑制作用はANP=BNP,血管平滑筋弛緩作用はANP>BNP>CNPである.これらの作用は何れも心臓の後負荷や前負荷を軽減し,心臓の働きを助ける方向に働く.そのためナトリウム利尿ペプチドは心不全(心筋障害)の病態を代償する役割を持つケミカルメディエーターと考えることができる.
本稿では現在までに明らかとなったナトリウム利尿ペプチド系と心不全との関連や,現在進行中の治療への応用について,われわれの若干の考察を加えて述べる.
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