特集 子どもの検査値の判断に迷ったら
7章 内分泌・代謝検査
8.ナトリウム利尿ペプチド
小垣 滋豊
1
1大阪急性期・総合医療センター小児科・新生児科
キーワード:
BNP
,
心不全
,
心筋症
,
腎機能
,
川崎病
Keyword:
BNP
,
心不全
,
心筋症
,
腎機能
,
川崎病
pp.1540-1543
発行日 2023年12月20日
Published Date 2023/12/20
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000002853
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ナトリウム利尿ペプチドには心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)がある.主として,ANPは心房で,BNPは心室で,CNPは中枢神経系,血管内皮,単球・マクロファージで合成されるとされている.ANPは心房の伸展刺激により,BNPは心室の負荷により分泌が亢進し血中濃度が上昇するため,心不全のバイオマーカーとして用いられる.BNPのほうが左室負荷をよく反映することから,心不全の補助診断法として感度,特異度の双方でANPより優位であり汎用されている.ただし,血中BNP濃度は,心臓からの合成分泌だけではなく,血中からのクリアランス,加齢,炎症,肥満などの影響を受けるため,過大評価や過小評価をしてしまう可能性がある(図)1).したがってBNP単独で心不全を判断せず,常に全身状態や他の検査も参考に総合的に判断することが重要である.BNPは心不全の存在,重症度,予後診断には有用であるが,治療効果判定については個人内での経時的変動を観察することが大切である.またBNPは年齢により正常値が異なり,生直後は高値であるが生後1~2週間で低下,生後2週以降は安定し,10歳以降になると男女差(男<女)が出ることが報告されている2).成人期では加齢による腎機能低下,左室重量増加,左室拡張能低下に伴ってBNP値が生理的に上昇する.
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