特集 CRRT
10.CRRT中の栄養・電解質
門川 俊明
1
Toshiaki MONKAWA
1
1慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター
pp.323-327
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100294
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
急性腎傷害(AKI)では,異化が亢進し,低栄養状態が生じる。低栄養状態と尿毒症状態は創傷治癒の遷延,免疫能の低下などを引き起こす。AKIにおいては体液管理が優先されることが多く,栄養管理が不十分になりやすいが,積極的で適切な栄養管理はAKIの予後を改善することが明らかとなっている。しかし,AKIと一言で言っても,原因疾患,重症度は症例ごとに異なっており,個々の患者の状態によって最適な栄養管理は大きく異なる。さらに,持続的腎代替療法(CRRT)施行中の場合,透析量,フィルターの種類によって,フィルターを介した栄養素の喪失の程度もさまざまである。また,CRRTは通常,数日間で離脱し,間歇的な血液透析などに移行することが多く,どの程度の期間CRRTを施行するかという見通しによっても栄養管理は異なってくる。
したがって,CRRT施行中のAKI患者の場合,個々の症例に最適な栄養管理を正確に述べることは難しい。また,このように多様な患者背景故,CRRT施行中の腎不全患者の栄養管理に関するエビデンスレベルの高い研究はほとんどない。そのため,ESPEN*1などのガイドラインも主に識者の経験に基づいたものになっている。本稿では,そのような認識のなかでガイドラインや少ないエビデンスをもとに,現実的な「CRRT中の栄養・電解質」について述べる。腎不全における栄養管理のガイドラインとしては,ESPENから出された腎不全における経腸栄養のガイドライン1)と腎不全における経静脈栄養のガイドライン2)が詳しく,これらにそって日本の製剤などを紹介しながら述べていきたい。
Copyright © 2010, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.