特集 CRRT
11.CRRT中の薬物投与量―抗菌薬の投与量設計を中心として
山本 武人
1
,
樋坂 章博
2
,
大野 能之
1
,
鈴木 洋史
1
Takehito YAMAMOTO
1
,
Akihiro HISAKA
2
,
Yoshiyuki OHNO
1
,
Hiroshi SUZUKI
1
1東京大学医学部附属病院 薬剤部
2東京大学医学部附属病院・22世紀医療センター 薬理動態学
pp.329-345
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100295
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持続的腎代替療法continuous renal replacement therapy(CRRT)の導入症例には急性期病棟の急性腎傷害acute kidney injury(AKI)が多く,したがって,通常は複数の薬物治療が行われている患者が対象となる。CRRT導入患者では薬物も除去され,血中濃度が保てない場合もあることはよく知られている。特に急性期病棟では,重症感染症とAKIが併発する症例は珍しくなく,CRRT導入患者に抗菌薬が投与されるケースは非常に多いものと考えられるが,抗菌薬にはCRRTの影響を受けやすい腎排泄型薬物が多く,血中濃度低下による有効性低下や耐性菌発生のリスクがあり,特に慎重な投与量調整が必要となる。
現在臨床で用いられる薬物の多くは,上記で用いられる抗菌薬も含めて,分子量が1000以下の小分子であり,尿素などの小分子老廃物と同様の原理でCRRTにより除去される。したがって,CRRTによる薬物除去については,標準化透析量やクリアスペース率といった指標を応用することで理解することができる。原則としては,CRRT導入時の投与量はクレアチニンクリアランスが10~50mL/min程度の患者に対する投与量と同程度と考えられるが,薬物の腎排泄に対する尿細管分泌や再吸収の寄与によって,異なった投与量設定が必要なケースもある。また,患者個々に血中濃度を最適化するためにはCRRT条件や患者の生理機能も考慮する必要がある。本稿では,抗MRSA薬であるアルベカシン,バンコマイシンを例に取り,CRRT条件も考慮した投与量設計法についても解説する。
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