特集 AKI
3.病態生理
(1)病理組織からみたAKI―組織構築と機能および病態別各論
原 重雄
1
,
伊藤 智雄
1
Shigeo HARA
1
,
Tomoo ITOH
1
1神戸大学医学部附属病院 病理診断科
pp.455-461
発行日 2009年7月1日
Published Date 2009/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100218
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腎臓は生体の内部環境維持に必須の臓器であり,極めて精巧な方法で水や電解質,pH,血圧の調節をつかさどっている。腎臓の重要な機能の1つである尿生成は,腎動脈から送られてきた血液が毛細血管を通って糸球体に入ることから始まる。糸球体で濾過された液体(原尿)は尿細管を経るうちに,水,電解質,アミノ酸などが再吸収または分泌され,最終的に尿として排出される。尿細管機能は,それを支える間質および毛細血管系との相互作用にも大きく影響を受けている。したがって,糸球体,尿細管,間質,血管系のどこかに異常があっても,本来ならば排出されるべき老廃物が血中に蓄積し,急性腎傷害acute kidney injury(AKI)と診断される。
AKIを病理組織学的に検討するにあたり,尿生成装置としての腎構成要素と,それを障害する病態に分けて考えてみたい。尿生成の基本単位は糸球体と尿細管からなるネフロンであり,腎性AKIは糸球体および微小血管を主座とする場合(糸球体腎炎,腎細小血管障害),尿細管・間質を主座とする場合(急性尿細管間質障害)の2つに分類できる(図1)。実際の病態では両者が相互に関連している場合も多いが,以下,糸球体ならびに尿細管間質病変について,始めに組織構築と機能を概説し,続いて各病態の発症機序と病理組織像を示す。
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