特集 AKI
3.病態生理
(2)細胞レベルからみたAKI―虚血性AKIを中心に
土井 研人
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Kent DOI
1
1東京大学医学部附属病院 腎臓内分泌内科・血液浄化療法部
pp.463-469
発行日 2009年7月1日
Published Date 2009/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100219
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腎臓は安静時に心拍出量の約1/4の血流を受ける血管系と,糸球体およびそれに続く尿細管より構成され,尿生成の機能単位であるネフロン nephron*1から成り立っている。
腎動脈は,葉間動脈interlobar artery,弓状動脈arcuate artery,小葉間動脈interlobular artery,輸入細動脈afferent arterioleと枝分かれし,糸球体内で糸球体係蹄glomerular capillaryを形成する。その後,合流して輸出細動脈efferent arterioleとして糸球体外に出た後,再度,傍尿細管毛細血管系peritubular capillary(PTC)networkを作り,特に尿細管への酸素供給源となっている。ネフロンは糸球体と尿細管に大別される。糸球体は血管内皮細胞,メサンギウム細胞,上皮細胞(ポドサイトおよびBowman囊上皮細胞)からなり,尿細管(近位尿細管,Henle係蹄,遠位尿細管,接合尿細管)は尿細管上皮細胞から構成されている(図1)。
急性腎傷害(AKI)という病態は腎臓のどの構成細胞の障害によっても生じうるが,本稿では最も頻度の高い虚血性AKIを中心に細胞レベルでみたAKIについて述べる。虚血性AKIにおいては,解剖学的に虚血性変化に弱いとされる近位尿細管直部やHenle係蹄の太い上行脚〔髄質外層外帯outer stripe of outer medulla(OSOM)〕が集中的に障害され,糸球体には明らかな病変がみられない。また,AKIでは尿細管間質に白血球などの炎症細胞浸潤が認められるが,これらの細胞の役割についても紹介する。
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