今月の主題 結合組織
巻頭言
組織学からみた結合組織
坂本 穆彦
1
Atsuhiko SAKAMOTO
1
1東京大学医学部病理学教室
pp.755-756
発行日 1994年7月15日
Published Date 1994/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902025
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身体の正常構造を論ずる組織学の領域では,すべての組織はすでに系統的に整合性をもって分類され尽くされ,当面大きな変更は加えられないであろうと思われがちではないだろうか.しかし,現在までの組織学の発展の歴史を振り返ると,今日なお諸領域における学問の進歩が組織学の内容に直接・間接に影響を与え続けていることがわかる.それは旧来の解釈の変更を迫る場合もあれば,分類上の位置の移動を強いる場合もある.また,いくつかの考え方が提出されていて近い将来の結着が予想し難く,柵上げ状態にされている課題もある.組織学全体の概観はどっしりとして揺るぎないもののようにみられるが,しかし随所で小さいが着実な動きが間断なく観察される.この様態は極点の氷山の生態にもたとえることができよう.
ここで取り上げる結合組織もその例外ではなく,多分に流動的な面を含んでいる.ところで結合組織は身体の形状,細胞・組織・臓器の位置関係を適正に保つ役割を果たす支持組織の主要構成成分の1つである.支持組織には結合組織のほかに骨,軟骨が含まれる.しかし,血液,リンパをここに同列に扱うか否かについては立場によって違いがある.はたして今後どのような展開をたどるのであろうか.
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