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■ALI/ARDS肺・VILIの病理学的特徴とその対策
ALI/ARDS肺の特徴は,その不均一性にある。血管透過性亢進の原因である血管内皮細胞障害が,肺内のあらゆる部位で生じる可能性があるからである。血管透過性が亢進し漏れ出した水分は肺水腫を引き起こし,局所のコンプライアンスを低下させる。しかし,その部位に隣接した部位は正常コンプライアンスを維持している。このような健常部分と障害部分が隣接,混在する不均一肺を陽圧換気する場合,強制的に送り込んだガスが思いどおりにすべての肺胞に均等に分配されると思ってはならない。流体の特性から,よりストレスの少ない局所にガスは集まる。繰り返し強制換気が行われる過程で水腫領域の含気は経時的に減少していき,不均一な換気はますます助長される。つまり,陽圧換気はARDS肺の不均一性を助長し,局所の過伸展や虚脱をさらに悪化させる可能性がある。
ARDSに特徴的な下側肺障害(図1-A)には,血管外に遊走した好中球や各種免疫担当細胞,ならびにそれらから放出されたサイトカインによる炎症反応が関与している。しかし,下側肺に見られる浸潤影は,炎症反応だけでなく,肺水腫や虚脱肺胞の集合体でもあることを理解すべきである。肺水腫により増加した肺血管外水分は重力により肺内を移動し,より低い場所,すなわち下側肺に集まる1)。これは水を含んだスポンジに似ており,体位変換とともに水分が移動し,浸潤影も移動する〔sponge lung theory(図1-B,C)〕。また,長期臥床や体動の消失により,心臓や腹腔内臓器による持続的な圧迫が下側肺に加わるので,肺は虚脱していく。動物研究では長期臥床のまま人工呼吸を続けると,肺虚脱を生じるとともに虚脱部位の血管透過性を亢進させた2)。
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