特集 ARDS
5.ARDSに対する人工呼吸管理 基礎編―歴史的変遷とスタンダードな管理の問題点
大庭 祐二
1
Yuji OBA
1
1University of Missouri 呼吸集中治療内科
pp.41-48
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100162
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■ALI/ARDSにおける肺の特徴
ALI/ARDSにおける肺のメカニクスの特徴は,病態がある程度進行して,間質の線維芽細胞の増殖や,II型肺胞上皮細胞の過形成などが起こる細胞増殖期proliferative phaseや線維化期fibrotic phaseになると,肺が硬くなることである(コンプライアンスの低下)。厳密に言うと,コンプライアンスの低下は,肺が硬くなるというよりも,換気可能な肺胞の数が減少するために,通常の1回換気量を使用した際に気道内圧が上昇するということを反映している。ARDSの病変をCTなどで観察すると,病変は肺全体に一様ではなく,局所的に病的肺がみられるのが通常である(図1)。
病変がひどい部分は,かなりの陽圧をかけても換気することはできないか,極めて困難である。一方,正常な部分では肺実質のコンプライアンスは保たれているので,換気不可能な部分に使われない余計な容量が健康肺に集まる。その結果,通常の1回換気量では,肺胞の過伸展をきたすことになる。このような換気可能な肺胞が減少して,機能的な肺の容量が減少する現象は“baby lung”と表現される1)。
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