昨日の患者
孫らへの最期の教え
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.657
発行日 2011年5月20日
Published Date 2011/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103558
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かつての日本では,家族に看取られながら自宅で亡くなるのが世間一般の常識であった.しかし,現代では病院で医療従事者に死を宣告されるのが普通である.したがって,誰もが看取りを経験していた昔と異なり,現代では死を身近に感じる人は少なくなった.しかしながら,最期の生き様を最愛の家族に教え示し,亡くなる人も存在する.
60歳代前半のTさんは,3年前に胃癌で手術を受けた.化学療法を施行したが癌性腹膜炎となり,ターミナルケアで再入院した.Tさんには娘さんと3人の孫がいた.いつも18時を過ぎると,娘さんが子供らを連れて見舞った.Tさんは孫らが来ると快活に起き上がり,孫らが語る今日の出来事を嬉しそうに聴き入った.また,孫らに手足を揉んでもらっては,気持ちよさそうに目を閉じた.そして見舞い時間終了の20時まで,綾取りをしたり歌を歌ったりして遊んだ.しかし,孫らが帰ると憔悴しきってベッドに臥した.
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