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今月の徹底分析シリーズでは,心停止症例に対する体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた体外循環式心肺蘇生extracorporeal cardiopulmonary resuscitation(ECPR)について取り上げる。救急領域で対象とされる心停止例を中心に広まりをみせているECPRだが,例えば肺血栓塞栓症による術中心停止などでも必要になる可能性があり,麻酔科医にも決して無関係ではない。
そもそも,われわれ麻酔科医が日常的に行っている麻酔管理は,ある種の蘇生行為である。呼吸・循環管理や中枢神経系を含む重要臓器管理を,急変患者に対してではなく,自らが投与した麻酔薬によって生じる予測された生体の不安定性に対して行っている点が異なるのみである。その麻酔管理において,読者は術中の患者状態さえ安定していればいいと考えているだろうか? 否,術後の良好な転帰のために,術中から各種モニタリングやパラメータの調整を続けているはずである。
黎明期を過ぎようとしているECPRには今後必ず,中枢神経系など重要臓器機能の良好な転帰が求められるようになる。その「+α」の価値を提供できるのは,不安定な患者の管理を日常的に行っている麻酔科医である。循環器内科医や救急医と協働し,ECPR導入に並行した迅速なモニタリングや薬物投与などで,全身管理に関する麻酔科医の知識や経験を役立てることができるはずだ。
全国には「蘇生」という言葉を冠する麻酔科学講座が数多くある。麻酔科医が麻酔だけでなく,蘇生のプロフェッショナルでもあることを矜持としてきたことの表れである。蘇生のプロフェッショナルとして,麻酔科医も積極的にECPRにかかわっていく。本特集がその一助になることを願ってやまない。
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