徹底分析シリーズ MICS麻酔デビューに向けて—低侵襲僧帽弁手術を低侵襲で終わらせよう!
巻頭言
隈元 泰輔
1
1済生会熊本病院 麻酔科
pp.855
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101203030
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- 文献概要
低侵襲心臓手術(MICS)は胸腔鏡補助下あるいはロボット支援下に小切開の肋間開胸で行う手技であり,胸骨正中切開による標準的な術式に比べ手術侵襲が小さい。胸骨を温存し,限られた作業空間で手技を行うため難度は高いが,縫合糸の結紮を瞬時に行える自動結紮器や外科的縫着が不要なスーチャーレス人工弁など,MICSに親和性の高いデバイスが発展することで飛躍的に普及している。
ただし,「低侵襲」とはあくまでも切開創が小さいというだけであり,大動脈遮断時間や体外循環時間は延長する。末梢血管からのカニュレーションによる体外循環,良好な視野を確保するための片肺換気など術中管理には工夫を要する。正面視した心臓弁の画像を共有できる反面,術者が触れられない部位や見えない部位があり,モニタリングで確認すべきことが多い。MICS特有の合併症の予防や早期発見のためには,心臓血管外科医,体外循環技士,看護師とのコミュニケーションなどノンテクニカルスキルも求められる。肋間開胸は小切開であっても疼痛が強いため,末梢神経ブロックなど術後の鎮痛方法も考慮する必要がある。このように配慮することが多い点で,MICSは麻酔科医にとって「高侵襲」であるかもしれない。
今月号の徹底分析シリーズでは,経験が浅い麻酔科医がトラブルなく低侵襲僧帽弁手術の麻酔にデビューできるように,早期からMICSに取り組んでいるハイボリュームセンターの知見をまとめた。「MICSのいろは」をしっかりと叩き込み,低侵襲僧帽弁手術を低侵襲で終わらせよう!
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