特集 病院の殻を破れるか—中小病院の柔軟性を生かす経営改革
巻頭言
神野 正博
1
1社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院
pp.105
発行日 2020年2月1日
Published Date 2020/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211128
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縮小社会に向かう「令和」の時代に必要なのは“病院”のパラダイムシフトかもしれない.人口減は医療ニーズの縮小を意味する.一方,超高齢社会においても急性期医療のニーズがなくなることはない.脳卒中や虚血性心疾患ばかりではなく,高齢者に特有な肺炎や大腿骨骨折の罹患率は高くなる.また,2人に1人ががんに罹患する時代において,より副作用の少ない薬物療法・免疫療法,低侵襲の手術のニーズも増大する.
問題は,これらの急性期疾患の治療が終わった後の患者,あるいは不幸にして治癒できなかった患者の生活に,病院がどこまで関与するかである.急性期疾患の治療期間が短くなる中で,どこまで「面倒見よく」対応できるかがカギとなるのではないだろうか.さらには,病院に来る前,すなわち未病の段階で,健康増進,生活習慣の見直しに病院は関わる必要はないのか.これは行政,健康保険組合,コミュニティの仕事とおっしゃる読者も多いだろう.しかし,病院がこの分野に参入しない理由もない.入退院支援で言うところのPFM(Patient Flow Management)を拡大したLife Stage Managementを考えていく必要がある.人生の中では,病院の前後の生活が大半を占め,ごく一部の時間に病院がある.あたかも,耐久自動車レース中のピットのような役割だ.短い時間にベストコンディションに調整して過酷なレースに送り出すわけだ.
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