特集 本格到来するDPC時代
巻頭言
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.669
発行日 2010年9月1日
Published Date 2010/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101768
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2003年度にDPCによる入院医療の包括払いを導入する際に,第1に包括払いに積極的な支払側と出来高払いを死守したい診療側の対立,第2に特定機能病院においても平均在院日数に最大2倍の格差が存在することによって示唆される標準化の遅れ,第3に短期間で分類の開発から報酬額の設定まで行わなければいけない厳しい日程,など様々な難題が立ちはだかっていた.これらの難題に対応するために,1万円以上の処置料などを出来高払いに残したうえで,入院期間によって4段階に逓減する1日当たりの包括払い,という日本独特の包括払いの仕組みが採用された.
出来高払いとの相違をさらに少なくするために,当該病院の導入時における出来高払いによる報酬額と,DPCによる包括払いの報酬額の差額を,「調整係数」によって補償する制度が採用された.「調整係数」は病院の努力によって,入院の実コストが導入後に下がっても,基本的に変わらなかった.その結果,批判の対象となり,2010年度から段階的に廃止され,代わって機能評価係数IIが導入された.同係数は,高度な医療を提供することに対するP4P(Pay-for-performance)と見なすこともでき,DPC対象病院においても診療報酬による経済誘導が,どこまで有効に働くかを注意深く見守る必要があろう.
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