特集 患者の医療情報探索
巻頭言
井伊 雅子
1
1一橋大学 国際・公共政策大学院 アジア公共政策プログラム
pp.261
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102237
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本来,医療とは患者と医療者の「協働」作業である.しかし,医療に関して日本では「知らしむべからず,由らしむべし」の伝統が生きており,「良い患者」とは医師の言うことをよく聞く従順な患者とされてきた.また,医療をとりまく制度やサービスについて患者が体系的に学ぶ機会が日本では少なく,いざ病気になって口コミやインターネット,雑誌を頼りに情報収集しているのが現状である.この10年くらいで,患者はとてもよく勉強するようになったが,情報の質も様々なうえ,たくさん情報を持っていても混乱し,苦悩している人もいる.本特集では,医療を患者と医療者の「協働」作業として捉え,現在様々な形で行われている市民の医療情報探索行動の支援のあり方を探った.
日本の医療制度改革は,病院改革を中心に,特に急性期病床の在院日数の短縮を進めてきた.患者情報に関しても,がん,心血管系疾患といった急性期の医療情報が比較的充実していると言えよう.しかし,われわれの日常に起こる医療や健康問題の8割はプライマリ・ケアの分野である.良好なコミュニケーションで医師-患者関係を築き,患者に寄り添い,責任を持って医療情報を提供してくれるプライマリ・ケアの専門家,いわゆるGP(General Practitioner,家庭医)の制度が日本には存在しない.これが患者満足度の低い理由の1つであろう.
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