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わが国では医師が病院や診療所を開設することが多い.従来はその医師が,自らが自分として可能であり,関心を持つ診療を中心にした開業であった.もちろん,専門分野を持つことは大切であるが,それが果たして“地域の人の期待”,地域の医療需要に適切に対応しているものであるのかどうか.さらに,“地域の人の期待”をどのように把握し,掘り起こし,積極的に参加を促すのか,患者だけではなく他の医療機関や職員(取引先)との関係作りをするか,本号において検証してみたい.
医療のような専門性の高いと言われる分野,また,製品の表面ではなく内部に高付加価値をもつ商品やサービスに関しては,多くの場合,需要側と供給側の間に情報の非対称性があると言われている.この情報の非対称性に起因して“地域の人の期待”と提供される医療に乖離が生ずる.言い換えれば,地域社会や医療を受ける当事者が期待していることを十分に認識し,それに応えるというマーケット・インという方式と,医療の提供者が自分の関心によってのみ行う医療,すなわち,プロダクト・アウトという方式の距離をどのように短縮するかということが,情報の非対称性の解消であり,利用者の選択を可能とすることとして求められている.そして,病院の理念を対象とする地域の人々に浸透させ,具体的サービス活動に関する情報を,客観性を持たせながら提供し,種々の個人や集団と双方向の関係を築いていくことが重要である.このことがパブリック・リレーションズであり,言葉の通り,パブリック:地域社会と,どのようなリレーションズ:関係を作るかということである.需要側のニーズと供給側の提供しうるサービスの間に双方が納得できる調和を作ることが今後いっそう不可欠となる.
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