徹底分析シリーズ 術中の輸液管理—自信をもってできていますか?
わたしの輸液管理法②—酸素需給を意識しながら血圧を維持
鷹架 健一
1
Kenichi TAKAHOKO
1
1旭川医科大学病院 麻酔科
pp.1208-1212
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202735
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【症例】 75歳の男性,身長165cm,体重65kg。
20年前から高血圧で,β遮断薬とカルシウム拮抗薬を内服しており,血圧のコントロールは良好である。5年前に急性冠症候群で左前下行枝に薬剤溶出性ステントが留置されており,バイアスピリンを内服しているが,術前7日間は休薬予定である。軽度腎機能障害〔推算糸球体濾過量(eGFR)40mL/min/1.73m2〕および貧血(Hb 11.0g/dL)を認める。血小板数は15万/μLと保たれている。慢性膵炎の急性増悪で複数回の入院加療歴がある。3年前に急性胆囊炎で腹腔鏡下胆囊摘出術を受けており,腹腔内の癒着が強かったという記録がある。定期検査で膵頭部癌を指摘され,開腹膵頭十二指腸切除術が予定された。今回も腹腔内の癒着が予想されるため,8〜10時間の手術時間および1000mLほどの出血量が見込まれている。術前の腸管前処置や経口補水,補液は行わない。術前6時間の絶食と術前2時間の絶飲を行う。
手術開始6時間の時点で腫瘍は摘出できたが,出血量は1500mLとなった。術中の血圧は徐々に低下し,心拍数は徐々に増加してきた。尿量は1時間当たり10mLほどである。鼓膜温は37.0℃だが,手掌温は33.0℃と低下してきた。1回換気量425mLで,脈圧変動pulse pressure variation(PPV)は15%である。
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